記念すべき第1回目は子供服ベンチャー起業の復活劇を取り上げる。
素晴らしい視点と予想外の困難、そして復活劇からは誰しもに役立つ知見が学べる。あなたがベンチャー企業で働いていなくても、そして子供服なんて買ったことなくても必ず参考になるはず。
このニュースレターでは、起業家が困難を乗り越えて得た学びをまとめてお届けする。
先人たちの事例を毎回ひとつとりあげ、その困難の原因から乗り越えた方法、さらに学びまでを徹底的に解説していく。本業・副業で成果を出したいと考えている人なら必ず参考になるはず。
今回紹介する起業はPrimaryという子供服販売会社。主にアメリカで事業を行っている。
この会社について調査するほど、あることを感じた。それは「コンセプトが素晴らしい」ということ。
私も子供が二人いるが何を着せればいいか正直全く分からない状態。毎日、妻に任せっきりになっている。それに加えて子供の成長は早い。服なんてすぐに買い替える必要がある。「毎回何を選べばいいの…」なんて思っている人も多いのではないだろうか。そんな私のような人にぜひおすすめしたい会社だ。
しかし、こんな素晴らしい会社であっても多くの困難を乗り越えている。簡単にここまでたどり着いた訳ではない。数々の企業と同様、会社設立直後には存続にかかわるような課題にぶち当たった。
なぜそのような困難に当たったのか、そしてどのように乗り越えたのか。詳しく解説していく。
この会社を起業したのは、GalynとChristinaという女性二人組。
彼女たちはビジネスのエリートだ。二人が出会いはDiapers.comという会社で働いていた時。この会社もベンチャー起業であり、立ち上げ当初から二人ともこの会社で働いていた。
Diapers.comではベビー用品やおむつなどを迅速に配達するサービスを実現。そして、最終的にAmzonに買収された。そんな起業の成功者である彼女たちが、さらに素晴らしいサービスを作りたいと思い立ち上げたのがPrimaryだ。
再度になるが、この会社のコンセプトは素晴らしい。
彼女たちは子供服の選びにくさに注目した。おむつには明確なサイズがあり、おおよそ選ぶべきものは分かる。
しかし、服は選ぶ基準が明確でない。子供服もシンプルに分かりやすく買いたい。そんな課題を解決すべく新しいコンセプトの子供服を提供している。
まず、Primaryの服には「男の子」「女の子」という分け方がない。あるのは「Baby」と「Kids」の2つだけ。すべての子供にすべての色を提供している。実際にPrimaryのHPを見てみると、どんな子供でも着れるようなデザインが並んでいる。どの服を選んでも、どんな子供でも着ることができる。そんな素晴らしいコンセプトだ。
もう一つの特徴は「服にロゴがない」こと。これは子供たちに服で自己表現をしてもらうため。あくまで主役は子供。服を作った会社ではない。どんな子供でも輝けるような質の高い服の提供に注力している。
ちなみに起業したGalynとChristinaの専門分野は二人とも「マーケティング」。しかも、かなり敏腕マーケターだ。このような素晴らしいコンセプトを作っても不思議ではない。市場調査も入念に実施。さらにデザインを担当するクリエイティブ・ディレクター、そしてカスタマーサポート担当もそれぞれ優秀な人材を獲得。
創業者の2人は赤ちゃん用具の会社で働いた経験もあり、すべて完ぺきに見える。しかし、世の中はそれほどうまくいかない。彼女たちは想像もしていなかったある大きな困難にぶち当たった。
完ぺきに思えたこの会社も予想外の困難に立ち向かうことになる。それは「サプライチェーンの確保」。コンセプトは完ぺき、マーケティングも問題なかったが、服を作って配送する部分で大きな壁に当たった。
彼女たちは服の製造を過小評価していた。専門の人を雇わず自分たちだけで対応しようとした。これが失敗の原因。当初は代理店に依頼して服の生産を行う予定だった。しかし、思うように服の製造が進まない。
原因は「小ロット、多品種生産」にある。
起業直後はいろいろな服を試作し出来栄えを評価する必要があった。実際に様々な服を作り、ジッパーの開け閉めから素材の肌触りまで、彼女たちはすべてチェックした。商品にするためにはこれを2~3回繰り返す必要がある。
服の販売には「品質を確保し、フレキシブルに生産できるパートナー」が必須なのだ。
しかし、工場側からすると小ロット生産は割に合わない。大きな注文を入れてくれる大企業へ必然的に優先度が傾く。その結果、生産はいつも後回しにされる事態に。目指している服が作れず、思うように開発が進まなかった。
さらに、商品も在庫が不足していく。在庫保有商品は60%を切り、注文があっても発送できない状態に陥った。顧客からも投資家からも不満の声が続出。このままでは会社を存続させることができない。この状況を彼女たちはどうやって乗り越えたのか。ここに今回の大きな学びがある。
結論を言うと「信頼できる他のサプライチェーン企業を見つけ、多額の投資をする」という方法で乗り切った。
これだけ知ってしまえば「そんなことか」で終わりかもしれない。そして「自分の専門外のところまでしっかり考えましょう」という程度の学びだけで終わるかもしれない。しかし、それだけではもったいない。
失敗は誰でもする。完璧に防ぐことはできない。とても優秀な彼女たちでも防げないのだから。防ぐよりも「どうやって乗り越えるか」。ここを学ぶことであなたの人生に役に立つ。
実際に彼女たちは簡単に困難を乗り越えたわけではない。この解決策に至るまでたくさん試行錯誤したどり着いている。そんな彼女たちの困難の乗り越え方は、まさにすべての困難への対処に通ずる。まさに失敗に対応するためにエッセンスが詰まっているといってもいいだろう。
彼女たちはこのように言っている。
人に助けを求める力が大事。人に迷惑をかけないのは大きなハンデになる。
自分でできることは限られている。それを自覚し、できないことは他の人に頼る。迷惑が掛かることを躊躇してはいけない。これが重要であることを彼女たちは強く言っている。
実際に彼女たちは、子供服のサプライチェーンに詳しい人物を見つけ出し、助けてもらうことで新しい投資先を見つけている。
何事も自分でやろうとするのは効率が悪い。成果を出す人ほど他人をうまく使う。自分がやるべきことと、他人に任せることの線引きをきちんと行い、やるべきことに集中する。「他の人に迷惑をかけてしまうのではないか…」という考えで、助けの依頼を躊躇する人は効率よく成果は出せない。これは何事においてもそうではないだろうか。
まず私たちが身に着けるのは「他人に助けを請う力」だ。
学びポイント
✅人に頼らないことは大きなハンデになる
先述した「助けてくれる人」を探す際にも苦労があった。
50人以上と話して、助けてくれる人が1人もいないこともあった。それでも、ひたすらたくさんの人に助けを請い続けた。結局、数で勝負するしかない。
お願いしても断られるのが当たり前。チャレンジしても失敗するのが当たり前。だからこそ、数をこなすしかない。この重要性を彼女たちは主張している。
特に難しいことにチャレンジしている時ほど回数は大事だ。しかし、大半の人が断られると心が折れてしまうのが現実。本当に成功する人は、何度断られても行動し続ける。シンプルだが、この差は大きい。結局、回数勝負だ。
学びポイント
✅チャレンジするときは回数勝負
成果を出すにあたって重要なことを彼女たちはこう語っている。
透明性を確保し、従業員・投資家含め全員が何が起きているのかを理解できるようにする。その上で本質的な課題を見つけ解決する。
そのためには時間をかけること。そして自信を持つこと。これが大事。
彼女たちが「何か裏技のようなもの」を使ったのではないかと思った人もいるかもしれない。「時短で簡単に困難を乗り越えられるすごい方法があるのでは?」と思った人もいるかもしれない。
しかし結局、困難を乗り越える裏技なんてものはない。状況を正しく理解し、時間を投資し、助けを求め、解決策を探る。これしか方法はないのだ。
超優秀な彼女たちでもこの方法で困難を乗り越えている。普通の人間は彼女たち以上に時間をかけ、助けを求めながら進んでいく必要があるだろう。
そんな彼女たちの姿勢を学んで私自身も喝をいられたような気持ちになった。成果を出したければ、時間をかけ、誰よりも考え、そして苦しむ。これしか方法はない。皆さんもぜひ心にとどめておいていただきたい。
学びポイント
✅困難を乗り越えるには状況を正しく理解し、時間を投資し、人に頼りながら解決策を探るしかない
この記事の締めとして彼女たちのこんな言葉を贈る。
いいアイディアがあるなら、いい仲間がすぐ近くにいるなら、今すぐそれを始めるべき。やらない理由はいくらでも見つかる。そんな言い訳せずに、今すぐ始めよう。
あなたはやりたいことにチャレンジできているだろうか。環境を言い訳にして自分を制御していないだろうか。それはもったいない。今すぐ始めよう。
誰よりも時間をかけコミットすれば必ず成功できる。このことを既に彼女たちが証明してくれているのだから。
★今回の学び
✅人に頼らないことは大きなハンデになる
✅チャレンジするときは回数勝負
✅困難を乗り越えるには状況を正しく理解し、時間を投資し、人に頼りながら解決策を探るしかない
今回は以上です。
このニュースレターでは常時みなさんからのご意見とご質問を募集しています。