第6回目はヘアスタイリングツールのベンチャー企業を取り上げる。彼女は差別化された商品を生み出し急速に事業を拡大した。今では2つの会社を経営する敏腕経営者だ。しかし、彼女は言う。「大切なのは仕事に没頭することではない」と。彼女の信念を知れば、あなたの人生がより豊かになるだろう。
このニュースレターでは、起業家が失敗を乗り越えて得た学びをお届けする。
先人たちの事例を毎回ひとつとりあげ、その失敗の原因から乗り越えた方法、さらに学びまでを徹底的に解説していく。本業・副業で成果を出したい人なら必ず参考になるはず。
今回紹介するのはMermade Hairというヘアスタイリングツールを販売している会社。
この会社ではヘアセットに使用するウェーバーやドライヤー、アクセサリー、ヘアケア商品などを販売している。
オーストラリアを拠点にしており、現在はアメリカやヨーロッパにもビジネスを広げている勢いがある会社だ。
この会社を有名にしたのは会社名でもある「Marmade hair」という商品。髪をカールさせるのに使用するヘアアイロンだ。
最初に発売したこの商品が25ヵ国で50万台以上売れる大ヒット。これにより一気に事業を拡大した。
一見何の特徴もない商品に見える。しかし、この商品は他には真似できない圧倒的な差別化を実現した。いったいどのように実現したのか。詳しく解説していく。
この会社を立ち上げたのはTara Simichという女性。
彼女はMarmade hairに加え、フィットネスブランドであるJungle Bodyの創業者でもある。
Jungle Bodyも順調に事業を拡大。フィットネス業界に新しい風を吹かせている素晴らしい企業だ。
2つの会社の創業者である彼女は、まさに敏腕経営者と言える。それに加えて彼女は2児のママでもある。そして、もちろん仕事と家庭を両立させている。
いったい彼女はどうやって両立させているのか。彼女はスーパーマンなのか。
そんなことはない。彼女の取り組みはいたってシンプル。
この方法を知ったとき私はこう感じた。「これなら誰でもできる」と。今回はその方法も丁寧に解説してく。
まずは彼女の過去をさかのぼってみよう。
彼女は大学で経済学を専攻。学生の傍ら19歳で会社を立ち上げる。その会社が形を変え現在のJungle Bodyとなっている。
しばらくして彼女は結婚。子供を出産しママになる。
ここで彼女はある悩みを抱えるようになった。生まれたばかりの子供がいると美容室に行けないのだ。結婚式に行く時も自分でヘアセットをしなければならなかった。
そんな彼女には好きな髪形があった。それはアメリカの女優、キム・カーダシアンのようなカールが強い髪型。特に根元から強いカールがかかっている髪型に憧れた。
普通のヘアアイロンではなく、もっと強いカールがかかるものが欲しい。そうすれば自分で理想の髪形にセットできる。
そう思い、ショッピングセンターやヘアツール専門店へ探しに行った。
しかし、そのようなものがどこにもない。当時は強めのカールをかけることができるヘアアイロンが販売されていなかったのだ。
彼女はこのことを母に話した。そして90年代に使われていたクリンパーを貸してもらう。
クリンパーのイメージ👇
しかし、デザインがよくない。
見た目がギザギザしている。色もおしゃれではない。これでは使う気にならない。
彼女はここに市場のギャップがあると感じた。見た目をよくしたら売れるのではないか。そう思い商品の開発に取り掛かる。
そこから、理想の商品に向けて彼女の試行錯誤が始まった。最初はDIYのように手作りで試行錯誤を繰り返したそうだ。
そして、より具体的なアイディアにするために中国に行く。ある企業と手を組みさらに具体的な商品にしていった。(このあたりの詳細は企業秘密)
ついに彼女は商品を完成させる。その商品がMarmade hairだった。
これを使えば誰でも簡単に強めのカールをかけることができる。見た目もピンクで可愛らしい。安全性にも考慮し、自分の理想に近い商品を実現したのだ。
しかし、この商品を量産するには初期投資として2万ドル(約300万円)ほど必要だった。売れるかどうか分からない商品にこれほどのの投資をしていいものか…
そんな彼女の背中を押してくれたのは、夫の一言だった。
売れなかったらロイヤルショーで配ればいいさ。やってみな!
※ロイヤルショートはオーストラリアにある遊園地のこと
今でも夫とは良きビジネスパートナーであるらしい。彼女は良きパートナーを持つことも成功の大きな要因だったと語っている。
こうして彼女は商品を量産し販売を始めた。
彼女の商品販売の方法はユニークだった。そして、現代では最も効率がいいといっても過言ではない。
それは、商品の宣伝を完全にSNSのみで行うこと。
彼女はSNSの中でもインスタグラムに目を付けた。当時はインスタグラムのトレンドが来ており、ここでうまく宣伝すれば商品が売れると考えたのだ。
彼女はMermade Hairのアカウントを作り発信を始めた。
この作戦が大当たり。開始一か月で大バズリしたのだ。
この勢いのままインフルエンサーに協力を依頼し、さらに商品の人気を押し上げる。そして、商品の注文が殺到するほどの人気商品となった。
ここから学べることは2つある。
1つ目はSNSの影響力のすごさ。
現在はSNSでバズることはすさまじい商品宣伝になる。広告にお金をかけなくても、宣伝ができる時代だ。それを彼女はうまく利用し商品を宣伝した。
SNSを攻略することは現代の大きな武器になる。あなたもぜひ真剣に取り組んでみてほしい。
2つ目は差別化の重要性。
インスタグラムでバズっている商品を見たとき、必ずこう考える人が出てくる。「他に安くて似たような商品はないのか」と。
しかし、Mermade Hairには似たような商品がなかった。つまり、この商品を買うしかなかったのだ。
あなたが取り組んでいることは簡単に真似できるだろうか。もしできるようであれば気を付けた方がいい。例えどれだけSNSでバズらせても、簡単に真似されてしまう。
ビジネスをやる際には、あなたにしかできないことを意識しよう。それが大きな参入障壁になりあなたのビジネスを守ってくれる。
学びポイント
✅現在のSNSの影響力はすさまじい
✅ビジネスをやる際には簡単に真似できないものにする
順調に立ち上がったビジネス。しかし、ここで大きなトラブルが発生する。
予想以上に商品が売れてしまったため、販売開始1か月で在庫が切れてしまったのだ。注文が殺到し、商品を届けることができないという事態に陥った。
ここでさらに彼女に追い打ちをかける事態が起こる。それはコロナショック。
サプライチェーンが崩壊し、商品の製造が大幅に遅れた。商品が港で2ヶ月立ち往生したこともあった。商品到着予定日から8週間遅れて商品が届くこともあった。
当然、お客さんから不満の声が上がる。毎日のクレーム処理により彼女は疲弊していった。
そんな時でも彼女が心がけたことがある。これがその後の彼女自信を助けることになる。
彼女が心がけたこと。それは顧客に対して親切に対応することだった。
不満を抱えている顧客に対しては、無料で他の商品を配るなどの対応を実施。返金にももちろん対応した。
インスタグラムでは荒らしも発生した。アンチコメントもたくさん届くようになった。
しかし、誰かを非難するような発信等は絶対にしなかった。そして、動揺している人に対しては自らDMし状況を説明した。
極めつけは電話だ。商品が届かない人にランダムに電話し、自ら状況を説明した。真摯に謝り、自分が誰で、今何が起きているのかを丁寧に説明したのだ。
こうしてそれぞれの顧客に対して、これ以上ないほど親切に対応した。だからこそ、納品遅れの影響も最小限に収まった。
そんな彼女にはある信念がある。
それは「商品でお客さんを感動させること」だ。
だからこそすべてのお客さんに丁寧に対応した。商品を少しでも早く届けるために1個8ドルの輸送費を払い、空輸で輸送をしたこともある(船だと1個50セント)。それほど顧客ファーストなのだ。
会社のKPIを追い求めすぎると、お客さんが傷ついてしまう。大事なのはいかに顧客に寄り添うかだ。彼女の姿勢からは、本質を見る大切さを学ぶことができる。
学びポイント
✅会社のことではなく、顧客のことを考えビジネスをする
そんな彼女は決して一人で困難を乗り越えたわけではない。たくさんの人に助けてもらい、支えられ前に進んだ。
そんな彼女は言う。
うまくいかない時は必ず周りの助けが必要です。だからこそ人とはいい関係を築きましょう。そうすれば困難を乗り越えるのが楽になります。
彼女はどれほど辛い状況でも決して閉鎖的にならなかった。周りの人に丁寧に状況を説明し、助けを求めた。SNS上でも誰かを非難することなく、常に前向きに対応した。
その結果、多くの人に支えられ彼女は成功した。
あなたが親切にした人は、困ったときに必ず助けてくれる。そんな人が多いほど、困難を乗り越えやすくなる。
まずは周りの人に対して親切にしてみよう。そうすればあなたの人生がよりうまくいくはずだ。
学びポイント
✅人といい関係を築いていれば困難を乗り越えやすくなる
現在、彼女は2児の母。CEOとして働きながらも、母親として家庭を支えている。
しかし、いったいどのように両立しているのか。そんな時間はどこから来るのか。彼女のやり方は非常にシンプルで簡単で理にかなっている方法だ。
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