第7回目は化粧品のベンチャー企業を取り上げる。この会社のCEOは完全に遅咲き。44歳から事業を始め一気に成功者まで上り詰めた。そんな彼女はシンプルだが真似できない方法で差別化された化粧品を開発。その方法はあなたの取り組みにも必ず参考になる。
このニュースレターでは、起業家が失敗を乗り越えて得た学びをお届けする。
先人たちの事例を毎回ひとつとりあげ、その失敗の原因から乗り越えた方法、さらに学びまでを徹底的に解説していく。本業・副業で成果を出したい人なら必ず参考になるはず。
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今回紹介するのはDrunk Elephantという化粧品会社。
原材料にこだわって、肌に優しい化粧品を販売している会社。日本にも進出しているので知っている人もいるかもしれない。
この記事を読んで気になった方。こちらのページから近くにDrunk Elephantのお店がないか確認してみてほしい。
この会社の実績はすごい。
ブランド立ち上げ後、たった7年で日本の大手化粧品会社「資生堂」に買収された。買収金額はなんと約8億4500万ドル(約1200億円)。
この当時、Drunk Elephantの従業員数はたった20人程度。この人数でとんでもない付加価値を生み出したのだ。
あの資生堂がこれだけの資金を出してでも手に入れたかったブランド。いったいどのようなものなのか。ベンチャー企業として立ち上がり、短期間でどのようにして成長したのか。詳しく解説していく。
創業者はTiffany Masterson(ティファニー・マスターソン)という女性。
この人の経歴を知るとあなたは驚くだろう。
なんと44歳まで普通の専業主婦だったのだ。ビジネスをやったことはなく、普通に子育てをしているどこにでもいるママだった。
そこからブランドを立ち上げ7年後に1200億円で会社を売却。すさまじいシンデレラストーリーだ。
彼女を見ていると「挑戦はいつからでも遅くない」ことを改めて感じる。家庭があっても、実績や経験がなくても関係ない。チャレンジできる人が成功する。
そんな彼女はどのように成功したのか。シンデレラストーリーを歩んでいた時の彼女の考えはどのようなものだったのか。これを知ればあなたの成功につながるかもしれない。
今からでも挑戦して成功したいと思っているそこのあなた。この記事でぜひ彼女の思考を身に着け、行動を起こしてほしい。
まずは彼女の過去からさかのぼってみよう。
学びポイント
✅チャレンジはいつから始めても遅くない
彼女の幼少期までさかのぼる。彼女はある有名なアメフト選手の娘として生まれた。
しかし、幼いころ両親が離婚。家庭では寂しい思いをして育ったそうだ。だからこそ彼女は「家庭を持ちたい」という思いが強かった。
30歳で夫と出会い結婚。約1年後に第一子を出産。ここで彼女は専業主婦になり家庭を支えることを決断する。自分の夢であった温かい家庭。それを手にして彼女はとても満足していた。
その後、双子ともう一人の子供を生み4人の母親になった彼女。子育ては大変だったが、自分の夢であった「母親として家庭を支えること」を実現。この上ない幸せを感じていた。
この時は自分がビジネスをやるなんて微塵も思っていなかった。子育ての隙間時間はネットサーフィンなどでダラダラ時間を過ごしていたそうだ。
自分の夢を叶え、十分幸せな生活をしている。もちろん、このまま普通の母として生きていくだろうと考えていた。
しかし、人生は何が起こるか分からない。そんな彼女にも転機が訪れる。ここから彼女のシンデレラストーリーが進み始める。
幸せな生活を送っていた彼女の生活が徐々に変化し始める。きっかけは夫のリストラ。景気悪化に伴い、長年勤めた会社をクビになってしまう。
そこから夫はファイナンシャルプランナーやジュエリーデザイナーなどの仕事で試行錯誤。何とか家計を支えるために奔走する。
そんな夫を見ているうちに彼女はこのように思うようになる。「自分でもお金を稼いでみたい」と。
子どももある程度大きくなっており時間はある。そして「何かクリエイティブなことをしてみたい」という思いが彼女を突き動かすようになる。
そうして彼女は仕事を始めることを決断した。
彼女は最初、食品関係の事業を立ち上げた。
彼女は料理が得意だった。この知識を他の人に分けることで、誰かの生活を豊かにできるのではないかと考えたのだ。
実際に彼女が行ったのは「冷蔵庫の中身コンサルタント」。
家庭を訪問し冷蔵庫の中身を確認。健康に悪い食品を入れ替え、どんな料理を作ればいいかアドバイスをする。このような事業。
最初は友達へのコンサルから始め、その友達は喜んでくれた。だが、しかし…。その友達の夫に猛烈に反対された。
確かに反対されるだろう。夫からすると、仕事から帰ってきて冷蔵庫を開けたら中身がごっそり変わっているのだ。自分が食べたいものは全部なくなっている。そんな状態になっていたら私でも発狂する。
結局、その事業は長続きしなかった。
その事業は諦めた彼女。次の事業を探していたところ…。
親族の結婚式で偶然あることを知る。この出会いが彼女は化粧品事業に踏み込むきっかけになる。
彼女は結婚式で親族の一人がある化粧品を販売していることを知る。
それはクレンジング(メイク落とし)用の石鹸。天然由来の粘土と藻などで作っており肌に優しいことを売りにしていた。
彼女は今まで化粧品がなかなか肌に合わないことに悩んでいた。いろいろ試してみたが肌に合うものがなく諦めていたのだ。
そんな彼女がその石鹸を一つもらい使ってみたところ、肌が劇的に改善。これに感動した彼女。その石鹸をさらに購入し友達何名かにも配布した。そして、友達の肌も劇的に改善。友人に大好評の石鹸だった。
「これを独占的に販売すれば売れるのではないか。」
そう考えた彼女はこの商品へ投資する。他の親族からもお金を集め、この商品を一括買い。「Wonder Bar」と名付け、独占的に販売できる権利を購入したのだ。
この商品は高品質を売りにしているだけあって高額だ。高いもので1つ1万5000円以上する。
それでも売れる自信があった彼女。当時、一日何百通もメールを打ち商品を宣伝した。そんな彼女の努力のおかげで、徐々に商品が売れ始める。
しかし、ビジネスはそれほど順調にいかない。ある日彼女に予想外の大きなトラブルが襲い掛かる。
商品の品質には絶対の自信を持っていた彼女。しかし、その品質でトラブルが発生する。
もともと、このWonder Barはマレーシアで生産していた。当然、マレーシアでも売られており、使用している現地の人も多数いた。
そのマレーシアの人達の中でWonder Barを使った後、ひどく肌荒れする人が続出したのだ。
当時はこのトラブルを「ヒーリングクライシス」と説明していた。簡単に説明すると「毒素を抜くために一度肌は荒れる。そのうちよくなる。」という感じ。
しかし、実際のところそうではなかった。肌を刺激されることによる肌荒れが発生していたのだ。
当初はそれほど大きな問題になっていなかった。しかし、これをある美容系の雑誌が特集する。詳細な調査の結果、ヒーリングクライシスなんてものはなくただの肌荒れであることが特定されてしまい、多くの人に知れ渡った。
彼女はここで大きな疑問を感じる。
「なぜ私の肌はよくなったのに、マレーシアの人の肌は荒れたのか。隠れている真実があるのではないか。」
こうして彼女はWonder Barの詳細な調査を始めた。
彼女はただ商品を売るだけでなく、スキンケアについて徹底的に勉強を始めた。化粧品に入っている成分一つ一つをすべて洗い出し、肌への影響を調査したのだ。
ちなみに余談だが、それまで彼女は普通の専業主婦だった。もちろんパソコンの使い方はそれほど詳しくない。スプレッドシートの使い方なんて全く分からなかった。20年近く専業主婦をしていた普通の女性だから当然だろう。
それでも情熱がある彼女は圧倒的なスピードで知識を吸収していく。スプレッドシートに各成分の特性をまとめ、材料の専門サイトで情報を集めるようになった。
このように情熱があれば年齢も経歴も一気にひっくり返すことができる。彼女の姿勢からは改めて、熱意を持つことの重要さを学ぶことができるだろう。やるべきことは言い訳することではなく、熱意を持つことだ。
話を元に戻す。
彼女は実際に肌が荒れた人からもフィードバックをもらい調査を行った。あらゆる化粧品に入っている成分を分析した。
その結果、ある事実が判明する。それは肌荒れの原因になっていたのはWonder Barではなく他のスキンケア商品に含まれる成分だったこと。
具体的にはエッセンシャルオイルを含む成分が肌荒れを誘発していることを発見した。
エッセンシャルオイルは天然由来で保湿効果があるものだ。しかし、そこに香り成分を足すため香料を追加する。この香料が肌荒れの原因になっていることを突き止めた。
この経験は彼女がブランドを立ち上げる大きなきっかけになる。
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