第4回目は栄養食品企業を取り上げる。最初に一つ注意点。今回紹介する人は会社を起業はしていないない。途中で引き継いでCEOになった。しかし、起業よりも大きな困難を乗り越えたと判断し紹介する。この逆境の大きさはあなたの予想を軽く超えていくだろう。
このニュースレターでは、起業家・経営者が困難を乗り越えて得た学びをまとめてお届けする。
先人たちの事例を毎回ひとつとりあげ、その困難の原因から乗り越えた方法、さらに学びまでを徹底的に解説していく。本業・副業で成果を出したい人なら必ず参考になるはず。
今回紹介するのはLifewayという栄養食品会社。
この会社はKefia(ケフィア)と呼ばれる乳飲料を販売している。
ケフィアとは牛乳やヤギ乳を発酵させて作られる酸味のある飲み物のこと。ビタミンや善玉菌などを多く含んでいるため、近年注目されている健康食品だ。実際にケフィア市場は年6.4%で拡大していくと予想されている。(参考)
そんな中、Lifewayはアメリカケフィア市場の95%を獲得している。つまり、市場をほぼ独占。低脂肪、無脂肪、ギリシャ式、オーガニックなど多彩なケフィアを販売し他社を寄せ付けていない。
年間売り上げも、2002年の1,200万ドルから2021年には1億1,900万ドル以上に拡大。他には真似できない商品を持つ、素晴らしい企業だ。
そんな企業も、かつては会社の存続を脅かすほどの危機に襲われた。社員全員が「この会社はもうダメだ」と思うほどの。そこからどのように復活したのか。詳しく解説していく。
今回紹介するのはJulie Smolyanskyという女性。
彼女はLifewayの創業者ではない。創業したのは彼女の両親だ。そして今は彼女がLifewayのCEOとして活躍している。
彼女の経営者としての実績は素晴らしい。
に選出された経験がある。
彼女は活動家としての顔もあり、なんとあのレディ・ガガと同じステージに立ったことがある。非営利団体も立ち上げ様々な活動を実施。直近では性被害にあった女性を助ける活動を続けている。
さらに、国連財団グローバル起業家評議会のメンバーであり、2015年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズの一員だった。いくつかのドキュメンタリー映画も作成している。そして、今は二人の子供の母親でもある。
このように素晴らしい女性であるが、ここまで順調に進んできたわけではない。あなたの想像を絶するような困難を乗り越えている。そんな彼女の言葉には、これ以上ないほどの説得力がある。あなたも間違いなく勇気づけられるはず。
時は1986年までさかのぼる。
Lifewayの基礎を作ったのは彼女の両親であるMichael SmolyanskyとLudmila Smolyansky。
彼らはソ連からアメリカに移住してきた。そして、東欧では一般的だったケフィアがアメリカでは浸透していないことに気づく。
美味しく健康にいいケフィアを販売したら売れるのではないか。そう思いLifewayを設立。アメリカでケフィアを販売する活動を始めた。
このビジネスは成功し、会社は軌道に乗る。2年後に会社はNASDAQへ上場。順調にビジネスを拡大していった。
会社が軌道に乗った当時、彼女は普通の女の子だった。
高校ではフィギアスケートとテニスに熱心に取り組んだ。将来の夢はセラピスト。人の心に寄り添って、他の人の生活を豊かにするような仕事を夢見ていた。
大学入学後、彼女は父の会社でデータ入力のアルバイトをするようになる。ここで始めてケフィアの魅力に気付く。人に有効な細菌や腸内環境の大切さを知り、彼女は感動する。現在こそよく知られているが、20年前は細菌の重要さを知っている人はほとんどいなかった。
食を通して人を助けることができるのではないか…
こう思った彼女は大学院をやめ、Lifewayに入社することを決意。食事やライフスタイルを通して人生を豊かにすることを宣伝し始める。
やりがいのある仕事を見つけ、順調にキャリアを進めていた彼女。そんな彼女にとんでもない災難が降り注ぐ。
彼女が働き始めて数年後の2002年。とんでもない大事件が起きる。
なんと、CEOであった彼女の父親が心臓発作で亡くなってしまったのだ。
誰かが会社を引き継がないといけない。誰か適任はいないのか…。人選は難航する。
そして、最終的に彼女がCEOを引き継ぐことになった。当時、彼女は27歳。上場企業では歴代最年少のCEOに大抜擢された。(当時)
もちろん社内からは不満の声が上がった。
「27歳にCEOが務まる訳がない」
「この会社は終わった」
会社の幹部達もこのような声を上げるようになり、士気は下がっていった。
しかし、ここで彼女はあきらめなかった。この悔しさを使ってさらに前進したのだ。
「今に見てろよ!絶対に成功させてみせる!」
こう思い彼女はCEOの業務を始めることになる。
幸いにも社員がすぐに離れていくことはなかった。取引先も離れず、継続して仕入れ・販売をすることができた。
しかし、社員からの信頼を早く勝ち取らなければならない。そして、会社をさらに成功させ多くの人の生活をより良いものにしたい。そのために彼女は全力で困難に立ち向かっていく。
彼女がまずやったこと。それは、「働いて働いて働きまくる」ことだった。
彼女は1日22時間働いた。ほとんど寝ずに働いた。それくらい仕事に没頭した。
これは同時に彼女自身を守るためでもあった。父を失った寂しさを紛らわすため。自分にCEOが務まるのかという不安をなくすため。彼女は一心不乱に働いた。
そんな姿を見て、社員たちも彼女を信頼するようになる。徐々に会社もうまくいくようになり、事業も拡大していった。
やはり、成果を出したければ時間を投資することは非常に重要だ。これは以前紹介した子供服ベンチャー企業の創業者も同じことを言っている。
子供服ベンチャー企業の復活劇からはあなたも使える素晴らしい知見が学べる |
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成果を出すのに近道などない。ひたすら考え、時間を投資し、解決策を探る。これしか方法はない。成果を出したい方は、まずあなたの時間を全力で投資しよう。
学びポイント
✅成果・信頼を得たければ時間を投資する必要がある
順調にCEOの業務をこなしていた彼女。
そんなある日、予想もしないトラブルに見舞われる。
なんと、商品が爆発し始めたのだ。
もともとケフィアは生きた微生物により作られている。爆発した商品は鮮度を今までになく高めたもの。そのため、容器の中で微生物が活動し続けていた。そして、その微生物が空気を作り出し容器が爆発する事例が多発したのだ。
顧客の冷蔵庫の中や車で商品は爆発した。クレームの電話が鳴りやまなかった。スーパーの棚から商品は降ろされ、被害が発生した顧客に清掃代を支払い続ける事態に。
品質が高いからこそ発生してしまったこのトラブル。一体、彼女はどのように乗り越えたのか。
彼女のこの経験からは、学びがたくさんある。順番に解説していく。
彼女はまず丁寧に状況を説明した。なぜこれが起こったのか、今後どうしていくべきかを社員・顧客に共有したのだ。
この時、彼女は目線を「自分たち」まで下げて説明をした。形式的なトラブル対応方法や訴訟リスクを下げる方法などの固い表現ではない。あくまで自分たちの目線から言葉を発した。
「”自分たちは”今後どうするべきか」「”自分たちが”実現したいことは何か」。このように自分たちの物語を話すように発信したのだ。
形式的でなく人間的な表現にすること。これにより、社員・顧客の信頼を得た。コミュニティの強化にもつながった。こうして彼女は困難を乗り越えていったのだ。
人の心を動かすのは論理的な言葉ではない。分かりやすい言葉でも、情報が網羅されている言葉でもない。聞き手が自分のことであると感じる言葉だ。これはストーリーテリングという手法でもある。
あなたは発信をするときに相手目線から発信できているだろうか。相手が引き込まれるような物語を語れているだろうか。ぜひ皆さんも考えてみていただきたい。
学びポイント
✅人を動かしたいときは、相手目線で物語を語る
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